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東京地方裁判所 昭和46年(ワ)9688号 判決 1974年5月15日

原告 黒岩千代

被告 神蔵ツネ

右訴訟代理人弁護士 植木植次

同 金住則行

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求める裁判

一  請求の趣旨

(一)  被告は原告に対し別紙物件目録記載の土地及び建物につき、昭和四一年五月二〇日売買に因る所有権移転登記手続をせよ。

(二)  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求趣旨に対する答弁

主文同旨の判決。

第二当事者の主張

一  請求の原因

(一)  原告は別紙物件目録記載の家屋(以下本件家屋という)に昭和三七年一二月三〇日より現在に至るまで居住し、カーアクセサリー及び部品の販売を業として営んでいる。

(二)  被告は別紙物件目録記載の土地(以下本件土地という)建物を抵当権の実行により昭和四一年三月一三日競落し、所有権を取得した。

(三)  原告は被告との間に、昭和四一年五月二〇日、本件土地建物を、代金四〇〇万円とし、その代金は昭和四四年五月一九日までの三ヵ年間は無利子、その後は日歩二銭三厘の割合による利子を加算して支払う約定で買受ける旨の売買契約を締結した。

(四)  原告は右買受代金四〇〇万円の内金一〇万円を昭和四三年三月三一日支払い、内金二万八〇〇〇円は原告の夫黒岩徹郎が被告方の家の門扉を取付け右代金二万八〇〇〇円を前記買受代金の支払いに充当した。

(五)  原告は昭和四六年一〇月一九日買受残代金三八七万二〇〇〇円及びこれに対する昭和四四年五月二〇日より弁済のため提供した昭和四六年一〇月一九日までの残元金に対する日歩二銭三厘の割合による利息金七八万五四七四円、元利合計金四六五万七四七四円を弁済のため被告に現実の提供をしたが受領を拒絶されたので同年同月二〇日東京法務局八王子支局に弁済のため供託した。

(六)  よって原告は被告に対し所有権移転登記手続を求める。

二  請求の原因に対する答弁

(一)  請求原因(一)項の事実中、原告が本件家屋に居住していることは認めるが、居住をはじめた時期は不知、その余は否認する。

(二)  請求の原因(二)項の事実は認める。

(三)  請求の原因(三)項の事実は否認する。

(四)  請求の原因(四)項の事実中、原告主張の日時に金一〇万円を受領したこと、原告の夫徹郎が被告の夫徳茂のために門扉の取付けをしたことは認めるが、右金一〇万円及び門扉取付代金が売買代金の内金であることは否認する。

被告の夫徳茂が受取った右金一〇万円は、被告が本件土地建物を競落してその所有権を取得し、原告が本件土地建物の明渡しを余儀なくされる状態となった昭和四一年三月一三日の直後七月までの明渡の延期料として右金一〇万円を受領したものである。

ところで、被告は原告が七月に至るも明渡しをしないので強制執行に及んだところ、訴外有限会社町田オートを設立し右会社が占有しているとして執行を妨害したので止むなく昭和四四年一〇月八日右訴外会社に対し本件建物明渡しの訴を東京地方裁判所八王子支部に提起し、昭和四六年四月二八日勝訴の判決を得た、原告は控訴したが東京高等裁判所においても昭和四七年八月一〇日被告勝訴の判決を得た。

(五)  請求の原因(五)項の事実中、原告が主張のような供託をしたことは認める。

第三立証≪省略≫

理由

一  原告が本件家屋に居住していること、被告は本件土地家屋を抵当権の実行により昭和四一年三月一三日競落し所有権を取得したことは当事者間に争いない。

二  原告は本件土地家屋を昭和四一年五月二〇日金四〇〇万円で買受け、代金は昭和四四年五月一九日までの三ヵ年間は無利子、その後は日歩二銭三厘の割合による利子を加算して支払う旨約し、内金一〇万円を昭和四三年三月三一日支払い、内金二万八〇〇〇円は原告の夫黒岩徹郎が被告方の家の門扉を取付右代金を支払に充当し、残額と利息の支払は被告に現実に弁済提供したが拒否されたので供託した旨主張するが、≪証拠省略≫によれば、本訴被告が原告となって本訴原告が代表取締役をしている訴外有限会社町田オートを被告として本件家屋明渡の訴を提起した東京地方裁判所八王子支部昭和四四年(ワ)第一〇一七号家屋明渡請求事件及び右判決に対し控訴された東京高等裁判所昭和四六年(ネ)第一二九九号事件において、本訴被告(右事件原告以下本訴被告という)が請求原因として主張したところは、「本件家屋はもと黒岩徹郎(本訴原告の夫)の所有であったところ競売に付され、本訴被告が競落して所有権を取得し、不動産引渡命令を得て本件家屋の引渡の強制執行を執行官に委任し、執行のため本件家屋に臨んだところ訴外有限会社町田オートが占有している、右占有は抵当権設定及び登記の後に始まるのであり民法三九五条所定の期間を経過し本訴被告に対抗できないから右明渡を求める」というのであり、これに対し本訴原告は、前記事件被告有限会社町田オートの代表取締役として、本訴被告が本件家屋を競落により所有権を取得したこと、不動産引渡命令を得て本件家屋の引渡の強制執行を委任し、有限会社町田オートが本件家屋を占有していることを認めた上、抗弁として本訴において本訴原告が請求原因として主張しているのと同一の主張をなし、右東京地方裁判所八王子支部、東京高等裁判所においていづれも右主張について実質審理を遂げ、理由なきものとして本訴原告の右主張は排除された上本訴被告勝訴の判決がなされていることが認められる。

そうすると前訴で主張されそれが重要な争点として実賛的審理を遂げた上、いづれも理由なしとして判断を下されているのであるから、右の点を再度本訴において主張することは許されないものというべきである。

よって右の点を唯一の請求の原因とする本訴請求は失当であるのでこれを棄却することとし、訴訟費用の負担については民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 西村四郎)

<以下省略>

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